189号(2005・1・20)
[謹賀新年]
明けまして おめでとうございます
本年もご愛読をお願いいたします。
[年頭挨拶]
「文化交流」こそ平和への道
日本対外文化協会会長 松前 達郎
新しい年を迎えて、今年は日本にとっても世界にとっても喜びの多い年になるように祈ります。日本対外文化協会は創立者の松前重義博士の念願に沿って差別、紛争の無い平和な世界を作るために、全てを超えた文化の交流でその理念を実現すべく活動を続けております。しかし、現実の世界は厳しい状況が続いております。イラクにおける武装紛争は止まるところを知らず、「戦争」はいまだに終わってはいないのです。そればかりか、イラク国内では宗教対決による内戦の様相さえ起きております。イスラエルとパレスチナの対立は一層複雑さをまして来ました。中国の軍事力の拡大は東アジアに不安定化をもたらし、中台関係はその内部に緊張をはらんでおります。
目を日本に向ければ拉致問題の解決は遠く、日朝関係は経済制裁の選択を迫る状況が続いています。世界はなぜこうした紛争を解決できないでいるのかと憂いが絶えません。そうした人類の紛争を怒るごとく昨年末にはスマトラ沖に発生した地震はかつてない津波を起こし多くの犠牲者をだしました。今、世界は決して「平和」ではありません。そうした現実を一人一人が認識していかなければならないと思います。「文明」は、その内部に人間がいかに優位に生きていくかという意思を拡大する目的を内在しています。その意味では「文明」は危険な要素を含んでいます。
近年よく言われる「文明の衝突」は、人類が持つ宿命なのかもしれません。しかし、その「文明」を超えていくものに「文化」があることも忘れてはならないでしょう。「文化」は、その時代に、またその地域に根付いた人間の生き方の最小単位だと思います。この「文化」をどのように生かしてゆくのかが本来の「文明」のあり様なのではないでしょうか。そうした人間が生きていく最小単位の「文化」に、いまこそ目を向ける時代なのかもしれません。「文明」はその拡大主義的宿命のために、他の「文明」の存在を拒否することが起きます。こうした「文明」と「文明」の衝突は世界史的に見れば誰にでもわかります。しかし、その一方でたとえ「文明」が衝突したとしても人間と人間の係わり合いを繋ぐ「文化」は決して消えることのない存在なのでしょう。
日本対外文化協会はそうした人間の持つそれぞれの「文化」に注目をしております。そのような観点から、かつては国家間で関係の悪かったソビエト社会主義共和国連邦と「文化」を軸にして新しい友好関係を築くことが可能でした。「文化交流」の有効性を実証してきました。現在、われわれは何をしなければならないのかを考えます。イラク問題、日朝問題、それぞれ「何かをしなければ」と考えます。しかし、現実はそう簡単にはいきません。それでもわれわれはくじけてはならないと思っております。目の前にあるほんの小さな「文化」を大切に育てて、その芽を大きくしてゆく努力が必要だと思っております。あちこちに頭をぶつけながらも、前に進むことを忘れてはならないと思っております。今年も幾つかの事業を試みます。その中心は日露修交150周年にかかわる行事になります。恒例の「日露国際シンポジウム」も計画されております。こうした人と人とを結びつける日々の活動が大きな流れになることを心から願っております。どうか皆様もこうした日本対外文化協会の設立趣旨をご理解いただくようお願いして止みません。
[対文協だより]
※ 第57回対文協研究会開く
対文協恒例の第57回研究会が「第2回日ロ学術・報道関係者会議」(2004年9月10日モスクワで開催)の報告会を兼ねて2004年12月20日、霞が関ビルの東海大学校友会館で開かれた。モスクワでの会議には日本側から15名が参加したが、報告会には司会として下斗米伸夫法政大学教授(同会議日本側座長)が当たり、パネラーとして佐藤尚環日本海経済研究所経済交流部長代理、小牧輝夫国士舘大学教授、大野正美朝日新聞社論説委員が出席した。各パネラーがそれぞれ専門的な分野での日ロ関係を報告、東アジアの安全保障問題、経済関係の予測など詳細な会議の報告があった。その後質疑に入り領土問題などを討論し参加者約50名は熱心に討論に加わった。
※ 対文協「新春賀詞交歓会」ご案内
対文協恒例の「賀詞交歓会」を下記のとおり開きます。友好諸国の大使館関係者などもご参加になります。新春を祝ってぜひご出席ください。(参加無料)
日 時2005年1月31日(月曜日)17時30分から。
会 場霞が関ビル33階 東海大学校友会館「望星の間」
千代田区霞が関3-2-5 電話 03-3581-0121
※ [おわび]
先月発行の「188号」は「187号」の誤りでした。このまま「187号」は欠番とさせていただきます。
[特 集]
「プーチン訪日と北東ア・日ロの諸問題」
<第2回日ロ学術・報道関係者会議報告会・第57回対文協研究会
報告者:(司会)下斗米伸夫法政大学教授、パネラー・佐藤尚環日本海経済研究所経済交流部長代理、小牧輝夫国士舘大学教授、大野正美朝日新聞社論説委員
[ロシアの新聞・雑誌から]
◇ 将来に不安を感じるロシア国民は67% (論拠と事実 No.51)
◇ 西欧流クリスマスを祝うロシア国民は1割 (イズベスチヤ 12月25日)
◇ 広がるスターリン見直し論 (イズベスチヤ 12月22日)
[焦 点]
※ 元旦の新聞「社説」を読んで
対文協常務理事 加藤 順一