158号(2002・7・10)
[対文協だより]
*対文協第42回研究会開く
対文協恒例の第42回研究会は、6月24日午後6時から霞が関ビル・東海大学校友会館で開かれた。前毎日新聞社モスクワ支局長の石郷岡建記者がモスクワから見た「日ロ外交交渉」の印象を語った。石郷岡記者はモスクワ大学を卒業、ロシア在勤は2回を含め17年間。日本からみた領土交渉の経過や、視点とは違った角度から日ロ交渉の困難さを指摘した。特に日本人の領土問題へのアプローチとロシア社会にある「国境問題」との落差を鋭く突き、改めてこの問題の難しさを印象付けた。約60名が参加、質疑も含め意義のある研究会となった。(特集参照)
*国際学生野球大会で東海大優勝
スポーツを通じての国際親善をめざした「第8回モスクワ国際学生野球大会」(主管/東海大学、モスクワ大学/協力・日本対外文化協会)が6月24日から4日間、モスクワ大学松前記念球場で開かれた。24日の開会式では、丹波実・駐ロ日本大使と松前達郎東海大学総長がバッテリーを組み、打席にサドヴィニチイ・モスクワ大学総長が立ち始球式を行った。東海大学、城西大学、国際武道大学、ニューヨーク州立大学、韓国漢陽大学、ウクライナ学生選抜、モスクワ大学、ロシア学生選抜の計8チームがトーナメント戦を繰り広げた。決勝戦は東海大学と城西大学が戦い、5対2で東海大学が優勝した。3位はニューヨーク州立大学。閉会式では尾郷良幸・東海大学理事から優勝杯と今回初めてモスクワ市長杯が東海大学チームに渡された。
*極東ロシア美術国際シンポジウム開く
日本対外文化協会が後援団体として参加している極東ロシア美術シンポジウム実行委員会主催の、「 極東ロシア美術国際シンポジウム」が7月5日 筑波大学会館国際会議室で開かれた。対文協が主催している巡回展覧会「極東ロシアのモダニズム 1918-1828」展に関連して、ロシア革命前後の極東ロシアにおける美術活動の展開と、国際的な、特に日本への影響を考える学術研究会だった。講演者およびパネリストは、エレーナ・トルチンスカヤ(サンクトペテルブルグ労働組合人文大学助教授)、リュドミラ・ コズロワ(極東美術館副館長)、滝沢恭司(町田市立国際版画美術館学芸員)、五十殿利治(筑波大学教授)アレクサンドル・シャツキフ(モスクワ美術史研究所上級研究員)、ジョン・ボウルト(南カリフォルニア大学教授)、ニコレッタ・ミスレル(ナポリ東洋大学教授)、望月哲雄(北海道大学スラブ研究センター教授)、沼野充義(東京大学院助教授)、水沢勉(神奈川県立近代美術館専門学芸員)らが参加。これまであまり研究されてこなかったロシア極東のモダニズムが問題提起され、参加者は熱心に聞き入っていた。
*日ロオーラルヒストリー聞取り調査
日ロオーラルヒストリーの会(対文協主宰)は、6月22日午後2時より、第26回調査としてかつて北海道大学、上智大学で教鞭を取られた文筆家の内村剛介氏の話を聞いた。現在82歳の内村氏は、満州に渡られた経緯、ハルビン学院での思い出、敗戦後11年間にわたるソ連での抑留生活、帰国後開始した文筆活動などを中心に約3時間、語ってくれた。
(出席者:木村明生、木村晃三、米重文樹、斎藤哲、武田洋平、および特別参加の大月晶子の各委員、長島七穂幹事)
[特 集]
◇ 第42回対文協研究会要旨
「特派員から見た日ロ外交交渉」
毎日新聞社・前モスクワ支局長・現編集委員 石郷岡 建
(ブラースチ誌 18号 5月14日付)
[ロシアの新聞・雑誌から]
◇524名の百万長者が税金申告 (イズベスチヤ 6月21日)
◇ロシアの裏口入学 (イズベスチヤ 6月28日)
[資 料]
◇ ルイプキン氏の大統領宛て公開状
「ロシア国民はチェチェン戦争にノーだ」
(コメルサント 6月29日)
[焦 点]
◇ 「文化」は「国家」を乗り越えられるか
(対文協常務理事 加藤 順一)
[編集後記]
◆カナダ・サミットでロシアは完全にG8入りした。昨年の9・11同時多発テロ以降、プーチン大統領の視線は完全に西に向いた。対米協力は国際テロ防止を軌軸に方向を転換した。NATO理事会入りでヨーロッパ政策の方向を決めロシアの欧米化は決定的に思える。こうした変化を日本はどのように受けとめるべきか。小泉首相は、本年末か来年早々に訪ロを希望した。内向きの政策がいつ外向けになるのか。日本の外交は今は停滞。外からは「不良債券の解消」だけを迫られている。
◆旧ソ連諸国が抱える大量破壊兵器解体が進んでいない。「核兵器廃棄協力委員会」 がロシア側の実施体制不備のために事実上ストップしている。ロシアの軍事上の機密保持がネックになっているといわれているが、日本もすでに200億円を拠出している。各国とも危険な核兵器の廃棄に躍起だ。日本からの促進発言が期待される。