140号(2001・1・10)

明けましておめでとうございます

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[対文協だより]

*第32回対文協研究会開く

年末恒例の研究会(第32回)はモスクワ国立大学経済学部のオレーグ・ヴイハンスキー教授(同ビジネススクール校長)を迎えて12月21日午後6時30分から、千代田区霞が関ビル・東海大学校友会館で行った。

今回のテーマは「プーチン政権下の1年」でプーチン大統領の新興財閥への対応を中心とした経済問題、マスメディア対策を含めた政治情勢について多種のデータをもとに約1時間半にわたり講演、参加者の関心を集めた。そのあと参加者との間で質疑と合わせ熱心な意見交換が行われた。


*片山醇之助展、エカテリンブルクで開催。

日ソ交流に貢献した元外交官を讃える「片山醇之助展」(主催・日本対外文化協会、後援・在モスクワ日本大使館)は9月のラトビア共和国のリガでの開催に引き続き、12月20日ウラル山脈の重工業都市、エカテリンブルク市立図書館「プーシキンの館」で開幕した。同展には片山氏の生涯を振り返る写真やパネルのほか、同氏が退官後ライフワークとして手がけたケルトヤーラ著「ロシア文学史」などのロシア語復刻版13種30冊の名著が展示され、関係者はもとより一般市民の関心を集めている。

なお同展は引き続き新春から4月にかけてピエルヴォウラーリスク市やチェリャビンスク国立大学、さらに秋にはレスノイ市を巡回する予定。

対文協では各地での展覧会終了後、それぞれ復刻版1セットを開催地の図書館や公共機関に寄贈する。

[特 集]

第32回対文協研究会  「プーチン政権の1年」
モスクワ国立大学経済学部教授 オレーグ・S・ヴイハンスキー
全記録を「ニュース レター」に掲載しています。

[ロシアの新聞・雑誌から]

 ◇「われわれは間違っているかも。だが・・・・」-国家シンボルに関するプーチン声明-  コムソモリスカヤ・プラウダ

  ◇物事を知らない世代  論拠と事実

  モスクワで、まだソ連時代の1990年に学校へ入学した世代が今年卒業した。彼らといくつも違わない年代から見てもまったく違う世代に感じられる。彼らにとってもはやガムやビデオはエキゾチックではなく、政治には無関心で、イデオロギーにも毒されていない、いわば「歴史のメモリー」が純粋に澄みきっているのだ。

「論拠と事実」誌所属ジャーナリスト養成学校に通う15歳から18歳の少年少女100名近くにアンケートをとった。「冷戦」「鉄のカーテン」の意味を聞き、さらに「いつソ連政権が終わったか」「我々はどんな体制の元に生きているのか」「どんな体制に生きたいか」という質問をした。さまざまな回答があって面白い。「鉄のカーテン」は窓の日よけ、劇場の予備のどん帳、抜き差しならない状況、国民に真実を隠すための目隠し等といった回答が出てきた。外国へで出国できないこと、はまだいい方だ。「冷戦」に関しては、ナイフによるけんか、刀剣類による戦争、国内の戦争など。正しく回答したのは3分の一以下だった。ソ連が終わった時期を、多くの回答者が1991年と正確に答えている。現今の時代を定義する質問にはほとんど誰も答えることができなかった。(しかしこれは歴史の専門家でも答えることができないのだから当然であろう)

モスクワのある小学校の歴史教師は次のようにこぼしている。「教養ある裕福な家庭の少年少女たちの無知さが年々ひどくなっている。「冷戦には何があったか」「ナポレオンとは誰か」を知らない17歳がいる。コンピューター世代は次第に考えたり、疑ったりすることをしなくなった。」

国立教育大学の歴史文学部学部長、ベーラヤ教授は「冷戦やゴルバチョフのペレストロイカでさえ彼らにとっては遠い過去の話だ。我々の歴史の認識は、ちょうど爆発で粉粉になった破片を思わせる。破片の中にあたかもソ連的考え方や反体制的なものや前衛的なものといった雑多の灰が含まれているようだ。過渡期には古いものと新しいものが゙混ざり合うのは避けられない。いまの現実やつい最近の出来事については今はまだ感情の助けを借りて認識されているだけできちんと整理されていない」と述べている。

無知世代が育ったのが誰の責任なのかわからないが、頭の中が混乱しているのは青少年だけではない。モスクワの学校では20世紀の歴史を9年生(14歳)から教えはじめる。しかし14歳に「全体主義」「イデオロギー」と言った言葉を消化することがはたしてできるのか。心理学では、社会科学への意識的な興味は、15歳以降に目覚めるとしている。 10年生や11年生で近代史の授業が再び繰り返されるが、すでに知っている事柄を深く掘り下げて勉強するのではなく、大抵は初めから勉強し直す。教科書は各学校が独自で選んでいる。モスクワには教科書出版社が大きな出版社が4つ、中小が10近くある。モスクワ教育委員会は、もうすぐ現代史教科書が作成されるという。著者の評価よりも事実重視で、議論のあった出来事の解釈も主観的なものではなく歩み寄ったものとなるだろう。次の時代に教育を受けむりやり新しい解釈をおしつけなくてもよい新世代の歴史教師がもうすぐ出現してくる。

「今のティーンエジャーは、何も誰も信じていない、信じていたとしても自分自身だけだ。いまの歴史の授業ではソ連の時代を悪く書いている教科書が使われている。ティーンエジャーの一番の関心事は、どこでどうやって手っ取り早く稼ぐかだ。」モスクワ大学の歴史学部の学科長の一人はこう言っている。

多くのモスクワの上級生は実際に冷戦やペレストロイカについての知識さえも持っていない。ガガーリンとは誰なのか、KGBの建物の前に誰の銅像が建っていたのか、ジェルジンスキーにはどんな功績があったのか、という質問にはおそらく答えることができないだろう。しかしどんな職業が今は儲けになるのか、といったことには大人よりも通じている。