137号(2000・10・10)

[対文協だより]

*サハリン・セミナー開く

対文協はロシアとの多角的交流の中で、2000年度はとくに地域交流の実施を事業計画に組み入れたが、その第1弾として9月19、20の両日ロシア・サハリン州のユジノサハリンスクで「サハリン・セミナー」を開催した。セミナーには東京から石原萠記・対文協監事(自由社代表)ら10名が参加、セミナーと合わせ現地ロシア企業のほか、日本企業の駐在員らと交流を行った。

19日は午前中、州行政府を表敬訪問、知事選挙で知事ら主要幹部不在のため、教育・文化・スポーツ局のアレクサンドル・カルロフ副局長と会見、地域交流について意見を交わした。午後は市内のサヒン・センター会議室を会場としてセミナーを開いた。  セミナー1日目は午後0時30分から経済学博士で州議会副議長のウラジスラフ・ルカヴェツ氏(ロシア21世紀委員会サハリン支部長)を講師に迎え、「サハリン州の現況について」、午後3時から州行政府の国際・対外経済関係局長のヴィタリー・エリザリエフ氏から「州経済問題と大陸棚開発について」をテーマに説明を聞いた後、それぞれ質疑を行い、北方領土問題と日ロ関係について意見を交わした。

なお、ルカヴェツ副議長は冒頭、「私は今、知事選に立候補することになりました」と述べ、同席のロシア人関係者も驚く一幕もあった。

2日目の20日は午後1時からサヒン・センターで、サハリン石油開発の杉浦敏廣サハリン事務所長から「サハリン石油開発プロジェクトについて」現況と今後の展望について詳細なレクチャーを受けた後、3時に外務省の在サハリン出張駐在官事務所を訪問、同会議室で渡辺修介領事・事務所長、村岡興・同専門調査員から「サハリン州の現状と日ロ関係全般について」の報告を受け、参加者と懇談した。

席上、渡辺所長から州知事選(10月22日)について「きょう現在ルカヴェツ州副議長の突然の立候補表明により候補者は5名となった。しかし実質的にはファルフトジノフ現知事とシドレンコ・ユジノサハリンスク市長の一騎打ちで、現職がやや有利といわれるが、予断をゆるさない。ルカヴェツ副議長の立候補は反知事派の票のくずしと見られている」との状況説明が行われた。(その後、ルカヴェツ氏は立候補を取り下げた)

2日間にわたるセミナーを終えた一行は、21日西海岸の州第2の都市ホルムスク(旧真岡)を訪問、州唯一の製罐工場(セルゲーエフ工場長)をはじめ、ミニコ副港湾長の案内でホルムスク商業港全般を視察、帰途通称"熊笹峠"の日露戦跡を見学し、3日間にわたる滞在日程を終え、22日函館空港着で帰国した。 [セミナー参加者]石原萠記団長、梶浦 篤(電気通信大学助教授)、河野健一(長崎シーボルト大学教授)、河本 弘(評論家)、塩見 健(小学館SAPIO編集長代理)、菅沼光弘(アジア社会経済開発協力会会長)、星野利一(大成建設常務取締役)、稲井聡子(大陸貿易・トラベル)、藤井 弘(対文協専務理事)、加藤順一(同事務局長)


*対文協ジャーナリスト代表団、ロシア・アゼルバイジャンへ

対文協主宰、ロシア東欧記者会「モスクワ会」メンバーを中心とする、「ロシアCIS視察ジャーナリスト代表団」が9月9日から8日間にわたるモスクワ、バクーの2都市を訪問、視察を終え同17日帰国した。

代表団は小田健・日本経済新聞論説委員を団長に、三瓶良一・毎日新聞論説副委員長、下斗米伸夫・朝日新聞客員論説委員、評論家の新井康三郎(読売新聞OB)、高橋実(共同通信OB)、中澤孝之(時事通信OB)、平野裕(毎日新聞OB)の各氏および河野健一・県立長崎シーボルト大学教授(毎日新聞OB)、亀田進久・国立国会図書館主任調査員の9名で、対文協から長島七穂事務局員が同行した。

モスクワでは第8回日露ジャーナリスト会議を開催したほか、モスクワ市長ら政界、経済界の要人と会見したのをはじめ、アゼルバイジャンでは政府、国営石油会社、報道機関などを訪問した。


[代表団行程]

10日 モスクワの南23キロにある「レーニン記念ソフホーズ」を視察モスクワ市議会議員でもあるグルニン所長と会見。

11日 下院会派「ヤブロコ」のイワネンコ副議長、下院保健問題委員会のゲラシメンコ委員長(ロシアの人口減少問題など)、戦略研究センター所長のピオン
    トコフスキー博士と会見、午後7時からロシア・ジャーナリスト同盟と夕食懇談を兼ねた「第8回日露ジャーナリスト会議」を開催、トレチャコフ独立
    新聞編集長、ボグリーノフ同盟議長らからマスメディアの現況などについて報告を受けた。

12日 午前中、ロシア産業・企業家同盟本部を訪問、ヴォリスキー会長および新興財閥のひとつ「シベリア・アルミ」グループのデリパスカ総裁と会見、午後
    は下院でセレズニョフ議長、ニコラーエフ下院国防委員会議長、「メディア・モスト」でグシンスキー会長の補佐官のオスタリスキー広報担当と会見し
    たほか、午後6時30分からモスクワ市庁舎でルシコフ市長と会見。

13日 午前中、各組に分かれロシア共産党副議長で下院教育科学委員会のメリニコフ委員長(モスクワ大学教授)、ロシア右派連合派の政治学者、カラムル 
    ザ・モスクワ大学教授、「ロシア兵士の母の会同盟」のメーリニコワ議長とそれぞれ会見。午後は「ノーヴァヤ・ガゼータ」(新新聞)でコジェウロフ
    社長、ムラトフ編集長、ミンキン評論員、インタファクス通信社のヴォスコヴォイニコフ社長と会見。

14日 バクーヘ。空港でアゼルバイジャン・ジャーナリスト同盟のハジエフ議長の出迎えを受ける。午後アゼルバイジャン企業家連盟のママドフ会長と会見。

15日 午前中、野党「社会民主党」本部でアリザデ共同副議長、アブドゥリャエヴァ女性部長のほか、民族独立党など4名の野党幹部と会見。午後は外務省を
    訪問ハラホフ次官ほか、ナスルレエフ経済相、ホシバトフ国営石油副社長とそれぞれ会見したほか、「ゼールカロ」紙のタリシンスキー編集長などアゼ
    ルバイジャンの代表的ジャーナリスト5名と会合、言論の自由や政治家の汚職問題などについて討議、意見を交わした。

16日 朝バクー発、モスクワ経由帰国。一行のうち小田、平野、亀田、長島の4名はラトビア日本文化週間に参加のため、同夜リガに向かった。(詳細は次 
    号)


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


訃 徳間 康快 副会長 死去

対文協副会長で徳間書店社長の徳間康快(やすよし)氏が9月20日午後6時17分、肝不全のため入院先の日本医大付属病院で死去した。78歳。

徳間氏は66年日本対外文化協会の創立に参画、同年松前重義会長を団長とする初の対文協ソ連・東欧視察団に参加、68年新生対文協発足に当たって副会長に就任、以後現在まで出版、映像分野での交流に多大の貢献をいただきました。この間77年ユーゴスラビア社会主義連邦共和国より「マダラ騎士勲章」を贈られたのをはじめ、ソ連、ポーランドからも文化交流に尽くした功績により勲章が贈られた。

例年、定時総会では理事長に代わって議長をつとめるなど、常に協会の運営にご尽力いただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。 お葬儀・告別式は23日午後1時から新宿区の千日谷会堂で行なわれ、対文協からも会長以下役員多数が参列しました。

なお、告別式は徳間グループ合同による「お別れの会」として、10月16日午後1時から港区・新高輪プリンスホテルで行われた。

[特集]

ロシアCIS視察「対文協ジャーナリスト代表団」報告
 「東に向くプーチンのロシア」
  ◎新都心シティ建設計画始まる。
  ◎「エリツィンの残した廃墟に--」
  ◎オリガルヒ制裁か、言論統制か。
  ◎日本料理屋や「すしバー」が繁盛。
  ◎高まる東方への地政学的な関心。

[ロシアの新聞・雑誌から]

 ◇「クレムリンとマスメディアの葛藤」 ザ・ロシア・ジャ ーナル35号

 ◇「クレムリン、ORTを制圧」 セヴォードニャ

 ◇「クレムリンのメディア脅迫の実態」 独立新聞

 ◇「検事局、事件捜査に動く」 モスコー・タイムズ

 ◇「言論統制の懸念を生む≪情報ドクトリン≫」 モスコー・タイムズ

 ◇「軍兵力、3分の1削減を計画」 モスコー・タイムズ

 ◇「サハリン石油の受益を州民に分配」 サハリン広報機関紙