132号(2000・5・15)
[対文協だより]
* 日露新時代・国際シンポジウム開催
21世紀の日ロ関係を展望する「日露新時代・国際シンポジウム」が、日本対外文化協会、毎日新聞社、北海道経済連合会ほかと共催で5月12日、札幌市の札幌プリンスホテル・パミール館で開かれた。午前10時から開会式が行なわれ、冒頭、森喜朗首相メッセージが読み上げられた後、実行委員長の斎藤明・毎日新聞社社長のあいさつに次いで、主催者代表として松前達郎会長(別項)、道経連の戸田一夫会長がそれぞれあいさつ、「このシンポジウムを機に日露のきずなを今後一層、深めよう」と訴えた。
会議は午前中、高村正彦・前外務大臣、ネムツォフ・ロシア下院副議長、パノフ駐日ロシア大使、堀達也・北海道知事が両国の立場に立ってそれぞれ基調報告を行なった。
高村前外相は「2000年までの平和条約締結に全力を尽くすという合意の実現を疑問視する声が多いが、今は双方が全力を尽くすべき時で、経済関係の発展などあらゆる分野での関係を積み重ね、前向きで新しい構築を図るべきだ」、堀知事は「北海道はロシアとの交流で先駆的な自治体であり、北海道とサハリン州との地域交流を深めて信頼関係を強固にし、領土問題の解決に向け地域の役割を果たしたい」とのべた。
これに対してロシアのネムツォフ副議長は「クラスノヤルスクの精神は成果を上げたが経済関係に大きな不満が残る。領土問題では両国の世論が正反対だ。この問題の解決のための交渉にはサハリン州と北海道も参加させ、両国の世論を接近させることが必要だ。平和条約の中身の議論では4島共同統治を提案する」と語り、またパノフ大使は「領土問題を除けば両国間には原則的対立はない。両国史上、今ほど良好な関係はない。首脳間の良好な関係だけで、即座に領土問題を解決することはできない。日米の下田会議に比肩する民間レベルの日露委員会をつくり政府に提案を行なってはどうか」と提案した。
午後はパネルディスカッションに移り、日本側から松田昌士・JR東日本社長、堤清二・セゾン文化財団理事長(対文協副会長)、藤原勝博・経団連常務理事、小川和男・ロシア東欧経済研究所所長(着席順)、ロシア側からボリス・ネムツォフ下院副議長、ミハイル・ザドルノフ下院議員、ビタリー・トレチャコフ独立新聞編集長の7名が出席、袴田茂樹・青山学院大学教授と石郷岡建・毎日新聞モスクワ支局長のコーディネーターにより両国の経済関係、平和条約問題、アジア太平洋地域の将来について3時間半にわたって活発な議論を展開、会議参加者による「札幌アピール」を採択して午後5時すぎ盛会のうちに閉会した。
なおシンポジウム開催に先立ち、11日夕、会場の札幌プリンスホテル・パミール館で歓迎レセプションが行なわれ、日ロのパネリストや地元の関係者ら約120人が出席した。レセプションでは斎藤実行委員長が「日ロ関係の発展を願い、あるべき姿にしたいとの一念でシンポジウムを企画、日本対外文化協会などの協力を得て実現にこぎつけました」とあいさつ。次いで堀知事が開催地を代表して「札幌の地で日露新時代がスタートできることを期待しています」と述べ、「ザ、ナーシュー、ノーブ、エポーフ」とロシア語の音頭で乾杯、シンポジウムの成功を祈念し、開催を祝って歓談が行なわれた。
[松前会長あいさつ要旨]
日ロ関係は1997年11月のクラスノヤルスクにおける橋本・エリツィン非公式会談98年4月の川奈会談など、これら一連の動きは、旧ソ連時代には全く進展を見なかった日ロ関係に、新しい活路が見いだせるのではないかという期待を、われわれに与えたのであります。しかし、今これらの一連の動きは、今日までロシアの政治体制の実情をふまえて見ますと、私個人としてはエリツィン大統領の考えにもとづく独自の判断によるものだったのではないかという懸念を感じています。言い換えますと、その背後に国民的合意の形成がなかったということであります。
この度、ロシアでは独裁的政治体制が崩壊してから初めての民主的大統領選挙が行なわれ、プーチン氏が大統領に就任されました。言い換えれば、国民の代表として初めての大統領の誕生ということになるでしょう。したがって、平和条約の締結の問題も新しい局面を迎えたと思います。
領土問題という課題を含む平和条約の締結に至るまでには、その環境づくりが重要となり、日ロ両国間の経済関係や、学術・文化の交流など幅広い活動を通じて、相互の理解のもとに締結へのアプローチを行うことが重要になったのではないでしょうか。
私ども日本対外文化協会は、民間外交として旧ソ連時代から30余年にわたって学術・文化の交流に努めてきましたが、その役割はますます重要になったと考えております。
この度のシンポジウムにはロシアからネムツォフ、ザドルノフの2名の下院議員、ならびにマスメディアのリーダーでもあるトレチャコフ独立新聞編集長の3名の方をお招きしまた、パノフ駐日大使にもご参加をいただきました。日本側からは堀・北海道知事をはじめ日ロ関係の改善に尽くされてこられた方々のご参加をいただいての国際シンポジウムであります。
ロシアに最も近く、交流も盛んな北海道での開催が、実りある成果を上げ日露新時代の第一歩となりますことを期待してあいさつといたします。
* 松前会長主催の歓迎夕食会開く
毎日新聞社との共催による「日露新時代・国際シンポジウム」に参加するロシア側パネリストのネムツォフ下院副議長(元第一副首相)、ザドルノフ下院議員(元蔵相)、トレチャコフ独立新聞編集長の3名を迎え、松前達郎会長主催の歓迎夕食会が10日午後7時から、霞が関ビル・東海大学校友会館で開かれた。
夕食会には木戸湊・毎日新聞社主筆、石郷岡建・同モスクワ支局長、飯島一孝・同編集委員、枝村純郎・元駐ロ大使、対文協からは尾郷良幸専務理事、石原萠記、渕上貫之両監事、事務局から藤井弘専務理事と加藤順一事務局長が同席、約2時間なごやかな歓談がおこなわれた。歓談中、新首相候補にカシヤノフ第一副首相が正式に指名されたとのニュースが入り、ネムツォフ、ザドルノフ両氏が期せずして「彼は私の部下だった。若いが有能な人物であり、ロシアが新時代に入った証である」と語った。
* ロシア・ザドルノフ元蔵相特別講演会開く
日本対外文化協会の第28回研究会は、10日午後3時30分から霞が関ビル・東海大学校友会館で、「日露新時代・国際シンポジウム」に出席のため来日したロシア国家院議員で元蔵相のミハイル・ザドルノフ氏を招いて特別講演会を開催した。
ザドルノフ議員は「ロシア経済の展望と日ロ経済発展の条件」を主題に、現在のロシアの経済状況、ロシア経済の中期展望、日ロ経済関係の将来の見通しについて1時間講演、「2年前の通貨危機以来低迷状態にあったロシア経済は過去10年間で最高の成長率を記録している」と述べ、さらに将来の見通しについて、政府の歳入も増加して財政の健全化が進んでおり、今年の貿易黒字は450億ドルに達するだろうと語った。またプーチン政権による法整備を含めた構造改革プログラムの実行率はとの質問に対して、基本税法は今年中に採択されると思うが、全体としては50・50と考えると述べた。
会場には櫻内日ロ友好議連会長、渡邊、都甲元駐ロ大使ら100人の参加者で満席、時宜を得たテーマだけに、いずれも熱心に聞きいっていた。
* 日露オーラルヒストリーの会
第18回の作業部会が4月5日午後2時30分から東海大学校友会館で、建国大学1期生の坂部正晴氏を迎えて聞き取り調査を行った。坂部さんは1920年生まれで80歳、ハルビン学院、建国大学、大同学院を卒業後、満州国官吏を経て関東軍司令部に勤務中終戦を迎え、5年間の抑留生活を終え、帰国後は法務省に勤務、青少年の非行問題に取り組んでいる。(出席者:木村明生、斎藤哲両委員)
また4月15日には、木村明生、木村晃三、加藤雅彦、平野裕、斎藤哲、米重文樹、武田洋平の各委員が出席、対文協事務局で打ち合せ会を行い、過去11名分の記録の整理についてそれぞれ報告が行われた。
* 第7回国際学生野球大会参加チーム決まる
隔年開催の「松前記念モスクワ国際学生野球大会」(東海大学・モスクワ大学主催、日本対外文化協会協力)は、本年第7回目を迎え、6月24日から6日間、モスクワ大学松前記念野球場で開催される。本年は過去最多の9チームが参加、予選リーグ、決勝トーナメント方式によって、松前杯をめぐって熱戦が期待される。
[参加チーム]
◇モスクワ大学、ロシア選抜、リトアニア学生選抜、フランス国立大学選抜、漢陽大学(韓国)、東京大学、創価大学、九州東海大学、東海大学
[特集]
「ロシアの新軍事ドクトリン」セヴォードニヤ・独立新聞
[ロシアの新聞・雑誌から]
◇「プーチン政治に新しい血」論拠と事実
◇「プーチンはペテルスブルクで誰を支持するか」コムソモリスカヤ・プラウダ
◇「地元はベレゾフスキーに愛想づかし」共同新聞
◇「ロシアがCP作成世界選手権で初優勝」イズベスチヤ
◇「プーチン大統領の初人事」イズベスチヤ
◇「ロシアの大学生は貧しくない」論拠と事実