129号(2000・2・10)

[対文協だより]

*新春特別シンポジウム開催

対文協恒例の新年賀詞交歓会に先立って、新春特別シンポジウム「変化を待つロシア」-大統領選を前に、が1月28日午後3時30分から、霞が関ビル33階・東海大学校友会館「三保の間」で開かれた。大晦日、エリツィン大統領の突然の辞任という衝撃的なニュースであけた2000年初のシンポジウムとあって、会場は会員、役員をはじめ日ロ友好団体関係者やマスコミ関係者など約130名の参加者で満員の盛況。

12月の国家院(下院)選挙では予想に反して、プーチン政権の与党である「統一」が勝利しましたが、会議はこの選挙直前の首都モスクワの政情を視察した「第7回ジャーナリスト・専門家視察団」のメンバーから3名の現職ジャーナリストをパネラーに迎え、大統領選の予想を含め現状の報告と討論を行なった。

講師はコーディネーター・平野裕(評論家)、パネラーは下斗米伸夫(朝日新聞客員論説委員)、植田樹(NHK解説委員)、三瓶良一(毎日新聞論説委員)の4氏。

会議に先立ち、尾郷良幸専務理事がパネラーの紹介を兼ねてあいさつ。パネラーの下斗米委員は辞任したエリツィン大統領の時代を検証、「エリツィンの評価は難しい。そのスタイルにポピュリズム、権威主義、国家主義がいりまじっているからだ。初代ロシア連邦大統領選出から、ソ連崩壊を経て93年までの急進改革派と、93年憲法採択前後から権力を持ちつつ、これを有効に発揮できなかった指導者、とでも分けることができよう。大向うをうならせる芝居はできても、移行期にふさわしい地道な改革者でなかったことに、エリツィンの負の遺産がある」と述べた。

また、植田委員はチェチェン問題のよってきたる背景を解明したあと、「99年秋以降2000年初頭にかけてはプーチン首相が政治舞台の主役だが、影の主役はチェチェンだった。チェチェン人はなぜ独立を主張し、ロシア人はなぜこれに大反発するのか?。北カフカス地方は帝政ロシアの領土拡張のシンボルとでも言うべき、ロシア民族にとっては忘れ難く、手放し難い土地である。チェチェン問題で燃え上がったロシア民族主義は、軍事作戦に何らかの決着がつけられた後も、ロシア政治の底流となるだろう」と述べた。三瓶委員はエリツィン大統領から禅譲の形で大統領の地位を目前にしたプーチンの政治姿勢についてふれ、「インターネットに寄せられた体系的な論文によれば、第1に愛国心、大国性、国家意識、社会連帯からなるロシアの伝統的価値を重視する一方で、経済改革、経済の効率性を強調している。いわば国家主義と改革路線の両立を目指している。またエリツィンとの関係は、これまでの人事を見る限り、早くもエリツィン離れの兆候がすでに見えている。日本にとってみればエリツィンから、プーチンに変わるということで、少なくともそれほどプラスというわけにはいかない」と述べた。  

最後にコディネーターの平野氏が、「ロシアはエリツィン辞任で新しい歴史のページを開いた。新大統領はいまのところプーチン代行が最有力である。日ロ関係では2000年までに領土問題を解決して、平和条約をという、エリツィン提案に基づく政府間の合意の実現は困難となり、外交日程の見直しが迫られているが、エリツィン時代の多面的交流の活発化は世界の潮流であり、この傾向は新政権下においても、領土交渉の話し合いと平行して進むでしょう。日ロ友好フォーラム21の事務局をつとめる対文協は、今後もロシア21世紀委員会と協力して、日ロ関係を大きく発展させて行くだろう」と結んで、2時間にわたる討論を終えた。

(内容の記録をご希望の方は、事務局にお申し込み下さい。1部250円・送料込み・にて郵送いたします)


*対文協2000年賀詞交歓会

日本対外文化協会の2000年、新春賀詞交歓会は1月28日、新春特別シンポジウムに引き続き、会場を「富士の間」に移し、シンポジウム参加者に加え、在京のロシア連邦をはじめブルガリア、スロバキアなど8ヵ国の大使館から大使、公使、参事官ら20名が出席して開かれた。

午後5時30分開会、松前達郎会長のあいさつについで、来賓の日ロ友好フォーラム21副会長の児玉幸治商工中金理事長があいさつ、枝村純郎元駐ロ大使の発声でミレミアムを祝って乾杯、同7時すぎまで歓談が展開された。


*友好団体新年会開く

1月21日午後6時から日本モンゴル親善協会の新春の夕べが、在京のモンゴル国大使館で、29日は日ロ交流協会の2000年日ロ合同新年会がロシア連邦大使館でそれぞれ開催された。対文協からは藤井弘専務理事、加藤順一常務理事事務局長のほか関係役員がそれぞれ出席した。


*日ロ・フォーラム運営委員会開く

日ロ友好フォーラム21は2000年の初会合として、2月15日午前10時30分から、衆議院第一議員会館第2会議室で第8回運営委員会を開催、今後のスケジュールを中心に審議、今秋東京で「日ロ・フォーラム2000」を開くことについて、ロシア21世紀委員会と連絡をとり、準備を進めることを了承した。

委員会には櫻内義雄会長をはじめ、児玉幸治、三塚博、村田敬次郎の各副会長、伏見康治顧問、末次一郎運営委員長、加藤順一事務局長ほか運営委員、事務局幹事ら30名が出席、櫻内会長と3副会長がそれぞれあいさつの後、議事に入り、はじめに加藤事務局長が事務報告を行い、末次委員長から訪ロ報告を兼ね、下院選挙後のロシア政局について詳細な分析が披露され、今回下院に立候補しなかったロシア21世紀委のロパーチン第1副議長が引き続き、その職務にとどまることが報告された。

人事案件では日ロ交流協会の役員異動に伴う選出運営委員の交替届と、日本青年会議所選出の佐藤茂幸委員に変わり小崎学氏(同会議所北方領土・日ロ関係委員会委員長)の交代人事を了承し終了した。


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谷畑 良三氏死去

・訃・ 対文協前理事の谷畑良三さん(ロシア問題研究家=栃木県太田原市)は2月6日死去しました。73歳。

同氏は旧満州ハルビン学院在学中に終戦を迎え、帰国後東京外国語学校に転学、毎日新聞社に入り、1955年、国交正常化前のソ連に入った移動特派員を含め通算7年、2度にわたりモスクワ支局長をつとめたソ連通で、著書多数。在職中の73年、対文協が中心となって東京で開催した「大シベリア博」実行委員会の事務局長として活躍。退社後75年対文協理事に就任、98年病気で引退するまで円卓会議ほか協会の運営活動にご尽力をいただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。