168号(2003・5・15)

[対文協だより]

※ 2003年度対文協定時総会開く

  対文協の2003年度・第36回定時総会は5月12日午後3時から、霞が関ビル・東海大学校友会館で松前達郎会長はじめ役員・会員50名が出席して開かれた。

  総会は出席者の承認を得て、理事会と同時進行の形で行われ、会議に先立ち松前会長があいさつ、「経済状態をはじめとして国内外の厳しい状況の中で、国際交流を主とした民間団体を運営していくことは大変難しいことです。こうゆう時こそ相互理解、平和への探求を趣旨とする対文協の活動の重要性というものが再認識されるのではないかと思っています。そして理想と現実のはざまをどう埋めて行くかが、私ども日本対外文化協会に課せられた使命と思います。対文協が今日まで続けて参りました学術・文化の交流をさらに推進しながら、相互理解と少しでも平和を長く維持するため、今後も全力をあげて取り組んでいきたいと思っています。皆様のより一層のご支援、ご指導をお願い申し上げます」と述べた後、来賓として出席されたパノフ駐日ロシア連邦大使のあいさつがあり、議事に入った。

  総会は後藤亘副会長が議長となり進行、はじめに2002年度の事業・財政・監査の報告3件を承認の後、新年度(2003年)の事業計画、財政計画を審議、全会一致で承認された。また役員改選に伴う人事では常務理事・事務局長の加藤順一氏の専務理事への昇任のほか常務理事に森隆一(電通常務執行役員)、山田清志(東海大学国際部長)の両氏を、新たに腰塚清一(北海道新聞取締役事業局長)、直井三郎(国際武道大学事務局長)、松尾智(共立建設取締役)の3氏を理事にそれぞれ選出、承認の後、同4時27分閉会した。


※ 「日ロ学術・ジャーナリスト会議開く」

  ロシア問題を専門とするジャーナリストと学者、有識者からなる、初の「日ロ学術・ジャーナリスト会議」(国際交流基金助成)が4月10,11日の両日、ロシア外務省付属・モスクワ国立国際関係大学で開かれた。同会議はこれまで毎年、対文協が実施してきたロシア専門家を含む「日ロ・ジャーナリスト会議」に代わり、日本対外文化協会とロシア側、ロシア・ジャーナリスト同盟とモスクワ国立国際関係大学の共催により、新しく発足したもので、政府主導による「ロシアにおける日本文化フェスティバル2003」プログラムのトップとして開かれた。日本からは加藤順一・対文協を団長とする16名の代表団が参加した。

  同会議には日本側16名のほか、ロシア側からはトルクノフ国際関係大学学長(ロシア国際政治学会理事長)、ムラヴィヨフ・ジャーナリスト同盟上級顧問、オフチンイコフ・ロシア新聞主任政治評論員ら30名が参加、オブザーバーとして在モスクワの日本大使館関係者や研修留学生ら約20名も出席した。

  [代表団]団長=加藤順一(対文協常務理事・事務局長)/会議座長=下斗米伸夫(法政大学教授・日本国際政治学会理事長)/伊東孝之(早稲田大学教授)/石郷岡建(毎日新聞専門編集委員)/小田健(日本経済新聞論説委員)/大野正美(朝日新聞論説委員)/佐藤陵一(東海大学講師)/斎藤哲(日本経済新聞社友)/田中和夫(NHK解説委員)/永綱憲悟(亜細亜大学教授)/平野裕(評論家)/溝端佐登史(京都大学経済研究所教授)/陸口潤(東京中日新聞論説委員)/望月喜市(北海道大学名誉教授)/李鐘元(立教大学教授)/幹事=長島七穂(対文協事務局)

  会議のメーンテーマは「北東アジアの発展と安定」で、1日目の10日は午前中、日本側・下斗米伸夫教授、ロシア側・A・メリヴィリ教授(国際関係大学副学長)の両氏が座長となり、それぞれ開会のあいさつを述べた後、第1部「イラク戦争と北東アジア」をテーマに討論が行われ、メリヴィリ教授の「世界新秩序の形成とイラクにおける戦争」、下斗米教授の「イラク戦争と北東アジア」についての基調報告に対し石郷岡建・毎日新聞専門編集委員らが発言、討論を展開した。

  午後はトルクノフ・国際関係大学学長が「朝鮮問題と北東アジアの安全」と題して報告、これに対して日本側の李鐘元・立教大学教授が発言した。引き続き第2部「ロシア、日本と日ロ関係」に移り、小田健・日本経済新聞論説委員が「プーチン政権と日ロ関係」と題し基調報告、大野正美・朝日新聞論説委員の関連発言が行われた。これに対しロシア側のチュグロフ・国際関係大学教授、クナーゼ・IMEMO主任研究員(元外務次官)、オフチンニコフ・ロシア新聞主任評論員、ミグラニヤン・テレビ評論員(改革基金副総裁)らが日ロの領土問題を中心に発言、活発な討論が展開された。

  次いで溝端佐登史・京都大学教授や同大学のトロライ、デニソフ両教授らが北東アジアにおける日ロ協力の可能性についてそれぞれ発言した。

  2日目の11日は会場を同大学の第2講堂に移し、日本側代表団による講演会「ロシアを知る日本人が見たソビエト連邦とロシア連邦-連続性と非連続性」が行われ、日本語を学ぶ学生を中心にした150名の聴衆を前に、平野裕、永綱憲悟、田中和夫、陸口潤、望月喜市、斎藤哲の各氏が伊東教授の司会のもと、それぞれの専門分野に基づいて講演を行い、参加者たちに感銘を与えた。(別項・特集ほか参照)

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  今回の会議についてロシアのメディアは深い関心を持ち、4月12日、チャンネルTVセンターの番組『ポストスクリプトゥム(追伸)』で、キャスターを務めるプシコフ外交問題評論員が、会議参加者へのインタビューをまじえ会議の模様を詳しく伝え、また4月15日付「議会新聞」も詳しく報じた。


※ 加藤事務局長、モスクワ大学訪問

  モスクワにおける第1回「日ロ学術・ジャーナリスト会議」代表団の団長として訪ロした加藤順一事務局長は4月11日午後、モスクワ国立大学を訪問、アレクサンドル・シドロヴィチ国際担当副学長を表敬、ユーリー・ババエフ国際部次長を交えて懇談、日本人留学生の授業状況の視察をおこなった。


※ ジャーナリスト・専門代表団、モスクワ、サマラ訪問視察

  モスクワで行われた第1回「日ロ学術・ジャーナリスト会議」に参加した代表団は会議の後、11日午後7時から日本大使公邸で開かれた野村一成大使主催の歓迎レセプションに招かれ、ロシア側参加者とともに出席したほか、モスクワではノボデーヴィチ修道院墓地などの観光施設やチェチェン人による占拠事件のあったドブローフカ劇場のその後の状況などを視察した。

  一行のうち下斗米教授をはじめとする溝端、陸口、平野、長島各氏の6名は13.14の2日間、国営科学産業宇宙ロケットセンターやソユーズ宇宙船の生産工場など政府関係機関や著名な美術館さらに第2次世界大戦中日本大使館の疎開先となった第一音楽学校など公共施設を視察したほか、サマラ滞在中、13日にはサマラ・ジャーナリスト同盟のイリーナ・ツブェトコーワ議長、政党「ヤブロコ」のイリーナ・スクーポワ州評議会議長、ウラジーミル・ズヴォノスキー州社会調査基金総裁、オレーグ・ルキヤノフ「ボス・プレス」編集長らと会い懇談した。14日には州政府でブィクトルカザコフ副知事と会見したほか、州議会ではヴィクトル・サザーノフ議長、ニコライ・スコベーエク副議長、イリーナ・ボイコ国際問題担当議長顧問と面談、サマラ州の政治状況や経済改革の成果について説明を受けた。

  また13日にはサマラアカデミー・オペラバレエ劇場でのコンサート鑑賞の際、代表団は居合わせたセレズニョフ下院議長から歓迎の挨拶を受け、オペラ「サマラの春2003」を堪能した。

  なお一行は帰途モスクワでロシア下院外交委員会のコンスタンチン・コサチョフ副委員長と会見、日ロ首脳会談で合意された「日ロ行動計画」に盛られたシベリア・極東石油パイプラインについて意見を交わし、同夜モスクワ発、16日成田着帰国した。

[特 集]

※ ◇ モスクワ開催・対文協「日ロ学術・ジャーナリスト会議」報告 Ⅰ

    ◇「イラク戦争後の北東アジアと日ロ関係」 評論家・対文協常務理事 平野裕

    ◎ 前日、イラク戦争反戦デモ
    ◇ 第一部会「イラク戦争と北東アジア」
    ◎ 北東アジアの安全保障
    ◎ 北朝鮮問題の解決を
    ◇ 第二部会「日ロ行動計画と日ロ関係」
    ◎ 「北方領土」をどうする
    ◎ 北東アジアでの日ロ協力

[ロシアの新聞・雑誌から]

◇ S・ユシェンコフ下院議員暗殺さる (コメルサント 4月18日)

◇ 「ノーヴァヤ・イズベスチヤ」騒動 (モスコースキエ・ノーブォスチ 4月8日)

◇ カシアノフ首相、オリガルヒと会談 (コメルサント 4月22日)

◇ ロシアのエネルギー資源 (論拠と事実 15号)

◇ モスクワと東京は、予防戦争に反対 (議会新聞 4月15日)

[焦 点]

※ ニュースをどう読んでいくか
  (対文協常務理事  加藤 順一)