164号(2003・1・15)

[新年のごあいさつ]

新しい時代に向かって進む

日本対外文化協会会長 松前 達郎

  新しい年を迎えて、読者・会員の皆様に心からの賀詞を申しあげます。日本対外文化協会もこれまでの活動を大切にしつつ、常に社会的な役割を自覚し、一層の努力を続けて皆様の期待に応えて行こうと思っております。

  今年は、日本は国内問題はもとより、国際的にも厳しい立場に立たされて行く事でしょう。昨年は日朝国交正常化交渉が暗礁に乗り上げてしまい、年を越えてしまいした。新年早々には小泉首相がロシアを公式訪問し、ここでは新しい視点からの「行動計画」が示されましたが、領土問題を含め平和条約への行く手は困難なものがあります。いま、世界は一日として止まっておりません。イラクにおける大量破壊兵器の査察問題は国際世論を大きく分けています。米国の中東での戦力の増強はいつ戦争が現実のものとなるかわかりません。朝鮮半島にもいつ戦火がもたらされるか事態は切迫しております。一方で、国際的なテロの恐怖は広がるばかりです。そうした複雑な国際情勢の中で日本はどのような選択をして行くのか多難な時代を迎えました。

  新しい時代には新しい発想が常に求められます。対文協は常に国際的な相互理解という視点で活動を展開してまいりました。人類の最大の悲劇である戦争を回避し、人々が国境を越えて理解し合う理想を掲げてまいりました。それが対文協の創立の原点です。いまこそこの理念を実現する努力をしなければならないと感じております。対文協はかつての危機的な時代を通じて、常に人々の融和と協調という視点から活動をしてまいりました。

  そして新しい年、新しい時代にどのような運動を展開するかが問われます。恒久平和を求める「原点」に立ち戻る覚悟が必要な時代です。言葉ではたやすい事ですが、平和は人々が大きな努力をしなければ実現しません。人々は、それぞれの伝統と生活を持ったコミュニティーを形成しています。その広がりは無限に見えます。しかし、民族、宗教、さらに国家というコミュニティーという段階で人類は壁を創り、違った文化を持つ集団を作り上げてきました。私達はそれを「歴史的必然」となかばあきらめてきました。しかし、新しい世紀は、そうした「歴史的必然」を破る力を持たなければなりません。個々のコミュニティーを孤立させるのではなく「融和と共存」へ進まなければなりません。科学技術の発展が人類共有のものであったことはそうした可能性を実証しています。いま必要なものはそうした対文協の原点にある「相互理解」ではないでしょうか。それには、まず互いに、それぞれの「歴史」と「文明」を十分に理解することから出発しなければなりません。21世紀は、その初めから困難な国際情勢の中にあります。私達はまず、日本の足元をしっかりと固め、国際的な役割を自覚することが急務でしょう。

  日本対外文化協会は、小さな一歩を確実に踏み出そうとしております。こうした理想に向かって活動を続けられるのも平素からの皆様のご支援の賜です。本年も変わらずのご厚情をお願いいたしましてご挨拶といたします。

[特 集]

◇  「12月下院選に活気づくロシア政界」
   (政党リスト一覧)
    •大統領府内に選挙運動めぐり派閥対立
    •オリガルヒは自衛のため選挙資金の分散計る

[ロシアの新聞・雑誌から]

◇  劇場テロ事件の遺族、補償を求め訴訟 (コメルサント 12月25日)

◇  トロシェフ将軍、シベリアへの異動拒否 (コメルサント 12月19日)

◇  宇宙産業収入は年間7億5千万ドル (論拠と事実 No.51)

◇  国内パスポート交換中 (論拠と事実 No.52)

◇  ウオツカ、キャビア、カニ (論拠と事実 No.52)

◇  政党政治の強化目指し大統領新法案採択 (イズベスチヤ 12月25日)

◇  197年に逆戻りしたトルクメニスタン (イズベスチヤ 12月31日)

◇  ロシアの学校制服事情 (イズベスチヤ 12月18日)

◇  ロシアの学校制服制度の変遷

[資 料]

◇  連邦法違反の地方法修正ほぼ終わる
  (コメルサント 12月25日)

[焦 点]

◇  メディアの「公共性」強化を
  (対文協常務理事  加藤 順一)